会計不正―会社の「常識」監査人の「論理」

会計不正―会社の「常識」監査人の「論理」

 会計不正―会社の「常識」監査人の「論理」
 出版社:日本経済新聞出版社
 発売日:2008-03
 レビュー評価の平均:(5.0)

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レビュー評価:(5)
本書は、単に会計不正の事例を紹介するものではない。また、教科書な監査理論を説明するものでもない。浜田氏の監査人としての経験や様々な事例から、帰納的に会計監査のあり方を理論化しようと真剣に試みたものである。従って、浜田氏の独自の理論や解釈が多く含まれる。

私自身「会計監査とは何か」について自分なりに考えてきたつもりだが、この本を読んでハッと思った。何故なら、私が自分なりに持っている価値観は、浜田氏とほぼ同一のものであったからである。それはやみくもに監査報酬の増額を志向するような監査人とは異なる価値観であり、会計不正を絶対に許さないという監査人の「のれん」が監査報酬を生み出しているという前提に立つ価値観である。

第1章のカネボウ事件等の各会計不正事件の分析は極めて理論的。第5章「監査人はなぜ会計不正を見逃すのか」は、現場を知る者からすると生々しいほど冷静的確である。監査論の教科書には書かれていない「生きた監査論」がここにある。会計監査に従事する公認会計士ないしはそれを志す方、関心がある方に強くお薦めしたい書である。

一つだけ批判を書かせていただく。浜田氏が中央青山の代表社員であったのは事実である。粉飾を起こした会社に関与していなければ責任がないというわけでもなかろう。本書の内容が素晴らしいだけに、その点についての反省がないことは残念である。

レビュー評価:(5)
カネボウ事件や他の不正事件に関連した書籍は多数出版されているが、浜田氏によるこの書籍は、その問題提議の論点の明快さと財務会計の専門家以外にもわかりやすく会計監査の具体的手順を説明している点で、広く学生から社会人までが日本(の企業)で起きている問題点を今一度考えるために一読すべき書籍であると思う。
 同氏が第2章「経営者はなぜ会計不正をするのか」で指摘している企業や組織の「閉鎖性」や「集団愚考」は、決して新しい指摘ではない。しかし、この組織の閉鎖性、セクショナリズムが監査法人内にも存在することが、監査人が会計不正を見逃す理由のひとつであるという指摘により、さらに身近な地域社会、職場、学校と、セクショナリズムによる歪みが日本のいたるところで蔓延している事実を改めて思い知ることとなった。
 仲良しグループは居心地が良い。しかしその(表面的な)仲良しを維持するには、我慢や「見て見ぬふり」も必要である。私たちは、監査人でないにしても、過度の居心地の良さを求めることなく時には孤独に耐える覚悟も必要であることを実感する読後であった。

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